その黄ばみ、磨けば落ちると思ってない?
- 黄ばみは外から付いたもの・歯そのものの色・外から中に入り込んだものの3つに分けられます。
- 磨いて落とせるのは1つ目だけです。残りは象牙質の中にあるので、表面からは届きません。
- 中年以降を約8年追いかけた研究では、9割近くの人で「見分けられる差」を超えて色が変わっていました。
- どれがどれだけかは、見ただけでは決まりません。当院は先に着色を落としてから色を測ります。
歯磨き粉を変えて、ブラシも変えて、時間もかけている。それでも鏡の中の歯は、思っているほど白くありません。
こういうとき、多くの方はまず自分の磨き方を疑います。ただ、黄ばみには種類があって、磨いて落とせるのはそのうち1つだけです。残りは歯ブラシが届かない場所にあります。どこにあるのかが分かると、何をすればいいのかも決まります。
01黄ばみは、3つに分けられます
エビデンス:中 着色の原因を整理したレビューは、黄ばみを外から付いたもの・歯そのものの色・外から中に入り込んだものの3つに分けています(Sulieman 2005)。
よく見かける説明は、前の2つで整理したものです。3つ目まで分けておくと、あとで出てくる「クリーニングしたのに一部分だけ残った」の説明がつきます。
エビデンス:中 4十年分の文献を集めた別のレビューは、着色の成り立ちを知ることが正しい診断につながり、患者さんに状態を説明できるようになると述べています。着色の仕組みが治療の結果に影響し、提示できる選択肢を左右する場合がある、とも書いています(Watts & Addy 2001)。
種類が分かると、打つ手が変わります。順番に見ていきます。
02①表面についたもの
エビデンス:中 1つ目は、食べ物や飲み物の色素などが、歯の表面か、そこを覆う膜の中に沈着したものです(Sulieman 2005)。この膜は唾液の成分からできていて、歯の表面を薄く覆っています。
これは落とせます。歯ブラシで落ちるものもあれば、歯科医院で器械を使って落とすものもあります。3つのうち、自分の手が届くのはここだけです。
エビデンス:中 なお、喫煙している方については、ホームホワイトニングを行った40名の前向き臨床研究で、非喫煙者より白くなりにくく、1日目から30日目にかけての暗くなり方も大きかったという結果が出ています(Silva 2023)。
03②歯そのものの色
エビデンス:中 2つ目は、象牙質の中にある色です。全身的な要因や、歯の神経に由来するものが含まれます(Sulieman 2005)。
そもそも歯の色は、何が決めているのか。ここに答えがあります。
エビデンス:中 生きている上顎の前歯を測った研究(120名・口の中での測定)は、歯の基本的な色は主に象牙質によって決まり、エナメル質はそこに乳白色の輝きやつや、半透明感といった、より複雑な色の効果を加えていると説明しています(Wee 2023)。
色を決めているのは、内側です。表面をどれだけきれいにしても、基調の色そのものは動きません。ここを変えようとする方法が、ホワイトニング(漂白)にあたります。
04③中に入り込んだもの
3つ目は、出どころと居場所が食い違っています。
エビデンス:中 レビューはこれを「表面のひび割れなどの欠損から、外の着色が象牙質に入り込んだもの」と定義しています(Sulieman 2005)。
入口は外側にあります。入った先は象牙質の中なので、表面をいくら磨いても、そこには届きません。もとをたどれば外から来たものなのに、外からの処置では手が出ない。この食い違いが、3つ目を独立した種類として扱う理由です。
クリーニングを受けたのに一部分だけ色が残ったという経験があれば、この種類が混じっている可能性があります。
05年齢の分は、磨いてどうにかなりません
ここまでは、原因を分ける話でした。もうひとつ、自分の手ではどうにもならない要素があります。
エビデンス:中 中年以降の2つの世代を追いかけた縦断研究があります。61名・上顎中切歯106歯を、平均およそ8年にわたって同じ人で測り直したものです。若いほうのグループ(1950〜52年生まれ・46名)では明るさが下がり、上のグループ(1930〜32年生まれ・15名)では鮮やかさが上がりました(いずれも P<0.001)(Hassel 2017)。
8年で、9割近くの人の歯の色が動いていました。磨き方でも、歯磨き粉でもなく、時間の分です。「最近くすんできた気がする」という感覚は、多くの場合そのとおりだったことになります。
※この研究の対象は中年以降の2つの世代で、若い年代は含まれていません(表題自体が「中年期と老年期における」となっています)。61名という規模でもあります。「誰の歯でも必ずこうなる」という意味には取れません。
06「黄ばむ」より、「暗くなる」
年代をまたいで集めたデータを見ると、もう少し細かいことが分かります。
エビデンス:中(ばらつき大) 18編を採用したシステマティックレビュー・メタアナリシスは、年代別に色の値をまとめています。明るさは、30歳未満で74.78、30〜59歳で70.07、60歳以上で65.71と、年代が上がるほど低い値に並びました。一方で黄みの値は16.35 → 16.17 → 17.77で、ほとんど動いていません(Martín-Martín 2024)。
それでも、向きには意味があります。私たちが「黄ばんできた」と感じているものの正体は、黄みが増したことよりも、明るさが落ちたことなのかもしれません。前に出てきた口の中での測定研究も、加齢とともに明るさが下がり黄みが増す傾向に触れていますが、はっきり動いているのは明るさのほうです。
なぜ明るさが落ちるのか。同じ研究は、歯は年齢とともに半透明感を失い、その下にある象牙エナメル境や象牙質が見えやすくなると述べています(Wee 2023)。内側が透けやすくなる、という説明です。
エビデンス:中 その内側も動いています。801名(18〜78歳)のパノラマX線写真で上顎中切歯を解析した研究では、年齢とともに象牙質側が厚くなる方向の変化が確かめられました(相関係数 0.679〜0.706・P<0.001)(Marques-Moura 2024)。
※ただしこの研究は50歳を超えると相関が認められなくなったと報告し、象牙質が厚くなることを「有限の過程」と述べています。一生ずっと厚くなり続けるわけではありません。加えて、この研究は色を測ったものではないので、「だから色が変わる」と直結させることはできません。3つの研究を並べて、そう考えられている、というところまでです。
07見分けてから決めます
自分の黄ばみが3つのどれなのか。これは見ただけでは決まりません。混ざっているのが普通で、割合も人によって違います。
当院では、下の前歯2本だけを先に白くして、どのくらい反応するかを実際に確かめていただけます。この2本については、事前の着色除去も含みます。先に表面の分を落としてから色を測るので、落ちる分と、残る分を、自分の歯で分けて見られます。
結果を持ち帰って、おうちで決めてください。当日の勧誘はしません。
表面の着色を落とすことと、歯そのものの色を変えることの違いについては「『サロンじゃ白くならない』って本当?」で、色をどう測るのかは「歯の色って、200色あんねん?」で扱っています。白くならない歯の種類は「差し歯も白くなると思ってない?」にまとめました。
- 黄ばみは外から付いたもの・歯そのものの色・外から中に入り込んだものの3つに分けられます
- 磨いて落とせるのは1つ目だけです。残りは象牙質の中にあるので、表面からは届きません
- 歯の基本的な色を決めているのは、主に象牙質です。表面をきれいにしても基調の色は動きません
- 3つ目(中に入り込んだもの)は、もとは外から来たのに外からの処置では届きません。「一部分だけ色が残った」の説明になることがあります
- 中年以降を約8年追いかけた研究では、9割近くの人で「見分けられる差」を超えて色が変わっていました。磨き方の問題ではありません
- 年代別のデータでは、動いているのは黄みより明るさでした。ただし研究間のばらつきが大きく、向きが読み取れるまでです
- どれがどれだけかは、見ただけでは決まりません。当院は先に着色を落としてから色を測り、落ちる分と残る分を分けて見ます
- Sulieman M. An overview of tooth discoloration: extrinsic, intrinsic and internalized stains. Dent Update. 2005;32(8):463-4, 466-8, 471.(レビュー。本記事の3分類の出典)PMID 16262034 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16262034/
- Watts A, Addy M. Tooth discolouration and staining: a review of the literature. Br Dent J. 2001;190(6):309-316.(4十年分の文献を対象としたレビュー)PMID 11325156 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11325156/
- Wee AG, Winkelmann DA, Gozalo DJ, Ito M, Johnston WM. Color and translucency of enamel in vital maxillary central incisors. J Prosthet Dent. 2023;130(6):878-884.(生きた歯を口の中で測定 n=120)PMID 35184886 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35184886/
- Hassel AJ, Johanning M, Grill S, et al. Changes of tooth color in middle and old age: A longitudinal study over a decade. J Esthet Restor Dent. 2017;29(6):459-463.(同一人物を追跡した縦断研究 n=61・上顎中切歯106歯・平均約8年。対象は中年以降の2世代で、若い年代は含まれません)PMID 28858417 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28858417/
- Martín-Martín J, Santos I, Gaitán-Arroyo MJ, et al. Dental color measurement to estimate age in adults: a systematic review and meta-analysis. Forensic Sci Med Pathol. 2024;21(1):382-400.(システマティックレビュー18編/メタアナリシス9編。研究間のばらつきが極めて大きく I²>98%、年代間で信頼区間も重なります)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11953101/
- Marques-Moura S, Caldas IM. Study of secondary dentine deposition in central incisors as an age estimation method for adults. Forensic Sci Med Pathol. 2024;20(4):1268-1275.(横断研究 n=801・18〜78歳。50歳を超えると相関は認められず、著者は「有限の過程」と述べています。色を測った研究ではありません)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11790684/
- Silva RR, de Carli JP, Della Bona A, et al. The influence of smoking on the effectiveness of at-home bleaching: A prospective clinical study. J Esthet Restor Dent. 2023;35(6):869-877.(前向き臨床研究 n=40)PMID 36960913 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36960913/
