インプラントは、何年もちますか?長持ちへの影響ランキング
- 「◯年もちます」と言い切れる研究はほとんどありません。研究が答えているのは5年97.2%・10年96.4%と93.2%・20年92%と78%という残り方です。
- 年数が延びるほど、数え方による差が開きます。違いは追跡から抜けた人をどう数えるかで、研究の良し悪しではありません。
- 持ちを分ける条件は、数字の開きが大きい順にメンテナンスの継続・歯周病の既往や喫煙・年齢。粘膜炎のあった方の5年後の周囲炎は通い続けた群18%・中断した群44%でした。
- 入れ直しはできますが1年で96.7%・最初より低く、2回目はさらに低い。安心材料にはしないでください。
「インプラントは何年もちますか」は、相談でいちばん多い質問かもしれません。短く「◯年です」とお答えできれば分かりやすいのですが、そう言い切れる研究は、ほとんど見当たりません。
研究が調べているのは「何年で寿命が来るか」ではなく、「5年後・10年後・20年後に、何%が残っていたか」です。 この記事も、その形でお伝えします。まず数字を見てください。
015年・10年・20年、何%残る?
エビデンス:強 5年の時点では、数え方が違ってもだいたい同じで、 単冠を支えるインプラントで97.2%でした(Jung 2012)。ほとんどが残っている段階です。
エビデンス:強 ところが10年になると、数字が二つに分かれます。前向き研究18件をまとめた解析では、従来の数え方で96.4%、途中で通院が途切れた人を考慮して数え直すと93.2%でした(Howe 2019)。
20年では、もっと開きます。92%と78%です(Kupka 2024)。
※年数が延びるほど、数え方による差が広がります。短い期間なら追跡から抜ける人が少なく、どう数えてもほぼ同じです。 長くなるほど「抜けた人をどう扱うか」で結果が動きます。
02同じ20年で92%と78%。何が違う?
92%と78%は、良い研究と悪い研究の差ではありません。同じ研究群を、追跡から抜けた人を「無事だった」と数えるか、考慮して数え直すかの違いです(Howe 2019・Kupka 2024)。 Howe らは、抜けた人を考慮した方が実際に起きることに近いとしています。
つまり「◯年もちます」と一つの数字で答えると、どちらの数え方を使ったかを隠すことになります。当院が「◯年もちます」とお伝えしていないのは、この幅を隠さないためです。ここから先は、その幅がどこで決まるのかを見ていきます。
03持ちに影響する条件ランキング
研究では、いくつかの条件で結果が変わっていました。報告された数字の開きが大きかった順に並べます。 順位は影響の強さそのものではありませんが、どれも決める前に確認できます。
② 歯周病で歯を失った経験・喫煙。エビデンス:中 どちらも周囲炎の起こりやすさに関わることが報告されています。 いずれも治療を決める前に確認でき、該当する場合は先に手当てをしてから進めます。
③ 年齢。エビデンス:中 同じ解析の中で、65歳以上では91.5%で、著者は高齢の群で失う危険性が倍になる可能性があると述べています(Howe 2019)。 年齢だけは変えられませんが、他の条件と組み合わせて考える材料になります。
※この順番は「どれが一番効くか」を証明したものではありません。研究で報告された数字の開きが大きい順に並べた、当院の見立てです。 測っているもの(周囲炎の割合・生存率)も研究ごとに違い、くじ引きで分けていないものも含みます。 「高齢だから受けられない」という意味でもありません。
04ダメになるとき、どう失われる?
20年の研究で報告された失敗の内訳を見ると、炎症で失うものと壊れて失うものの両方がありました。 ある研究ではインプラント周囲炎11本・破折1本、別の研究では破折6本・結合しなかったもの1本です(Kupka 2024)。
この2つは対処が違います。炎症には清掃と定期的な確認、破折には噛む力の管理(歯ぎしり・食いしばりへの対応、噛み合わせの調整)が要ります。 メンテナンスで両方を見ているのは、このためです。
05ダメになったら、入れ直せる?
エビデンス:中 失われた場所に入れ直すこと自体はできます。24件の研究をまとめた解析では、 入れ直した1本目は1年後に96.7%が残っていました(Gareb 2025)。
ただし、著者の結論は「最初に入れたときより生存は低い」です。そして2回目の入れ直しは、1回目よりさらに低いと報告されています。
なお、失われたあとに必ず入れ直すわけでもありません。骨の状態やお口全体の状況によっては、 別の方法(ブリッジ・入れ歯・その部分は補わない)をご提案することもあります。
06結局、どう考えればいい?
「何年もつか」は、買う前に決まっている数字ではありません。研究では、メンテナンスの継続・歯周病の既往・喫煙・年齢で結果が変わっていました。
当院の相談では、CTの診断とあわせてこの条件を確認し、ご自身の場合に何が不利に働くかをお伝えします。変えられる条件があれば、治療を始める前に整えることをご提案します。
- 「◯年もちます」と言い切れる研究はほとんどありません。研究が答えているのは5年97.2%・10年96.4%と93.2%・20年92%と78%という残り方です(Jung 2012・Howe 2019・Kupka 2024)。
- 年数が延びるほど、数え方による差が開きます。違いは追跡から抜けた人をどう数えるかで、研究の良し悪しではありません。
- 持ちを分ける条件は、数字の開きが大きい順にメンテナンスの継続・歯周病の既往や喫煙・年齢。 粘膜炎のあった方の5年後の周囲炎は通い続けた群18%・中断した群44%でした(Costa 2012)。
- 失われ方は炎症と破折の2通りで、対処が違います。
- 入れ直しはできますが1年で96.7%・最初より低く、2回目はさらに低い(Gareb 2025)。安心材料にはしないでください。
インプラント治療は自由診療(保険適用外)です。費用・標準的な回数と期間・リスクと副作用はインプラントのご案内に記載しています。ご自身の場合に何が当てはまるかは、診察のうえでお伝えします。
- Jung RE, Zembic A, Pjetursson BE, Zwahlen M, Thoma DS. Systematic review of the survival rate and the incidence of biological, technical, and aesthetic complications of single crowns on implants reported in longitudinal studies with a mean follow-up of 5 years. Clin Oral Implants Res. 2012;23(Suppl 6):2-21.(単冠を支えるインプラントの5年生存97.2%・95%CI 96.3-97.9%)PMID 23062124
- Howe MS, Keys W, Richards D. Long-term (10-year) dental implant survival: a systematic review and sensitivity meta-analysis. J Dent. 2019;84:9-21.(前向き研究18件のSR/MA。従来解析96.4%・脱落を考慮した感度解析93.2%・65歳以上91.5%)PMID 30904559
- Kupka JR, Konig J, Al-Nawas B, Sagheb K, Schiegnitz E. How far can we go? A 20-year meta-analysis of dental implant survival rates. Clin Oral Investig. 2024;28(10):541.(論文8件。前向き完全症例92%・欠測補完78%・後ろ向き88%)PMID 39305362
- Gareb B, Vissink A, Terheyden H, Meijer HJA, Raghoebar GM. Outcomes of implants placed in sites of previously failed implants: a systematic review and meta-analysis. Int J Oral Maxillofac Surg. 2025;54(3):268-280.(24件のSR/MA。入れ直し1本目の1年生存96.7%・95%CI 92.8-99.3%)PMID 39490354
- Costa FO, et al. Peri-implant disease in subjects with and without preventive maintenance: a 5-year follow-up. J Clin Periodontol. 2012;39(2):173-181.(粘膜炎のあった80名の5年後。メンテあり18%・なし44%。無作為化はされていない)PMID 22111654
