ホワイトニングで歯が溶けるって、本当?
- 溶かして白くしているのではありません。抜去歯の実験では、ミネラルを溶かすと明度は−8.5で暗くなりました。
- 硬さの低下は漂白の直後で処置の51%に報告されています。ゼロではありません。
- ただしその割合は人工唾液を使った研究やフッ化物なしの研究で高くなり、後処置を経ると29%に下がりました。
- 当院も「安全です」とは申しません。研究がそう言い切っていないためです。
ホワイトニングを調べていくと、どこかで行き当たる話があります。エナメル質が溶ける、もろくなる、薄くなる。
この記事でお伝えしたいのは2つです。溶かして白くしているのではありません。ただし表面に何も起きていないとまでは言えません。その線引きを、研究のやり方まで含めて見ていきます。
01まず、白くなる仕組みは「溶かすこと」ではありません
ここは別の記事で詳しく扱っていますが、結論だけ先に置きます。
エビデンス:中 抜いた歯60本を6群に分けた実験では、ミネラルを溶かした歯は、明るくなるどころか暗くなりました(明度 −8.5)。酸化した歯は +19.9。著者は過酸化水素は有機質を酸化することで歯を白くすると結論づけています(Eimar 2012)。
溶かすことが白さの正体なら、この結果にはなりません。「溶かして白くしている」は、事実と違います。
では、表面には何も起きていないのか。ここからが本題です。
02「硬さが下がった」という報告は、確かにあります
エナメル質の表面の硬さを測った研究は多数あり、漂白の直後に硬さが下がったという報告もあります。
エビデンス:中 実験の条件が結論をどう変えるかを検討したレビューによれば、漂白の直後に硬さの低下が見られたのは、処置の51%でした(Attin 2009)。
およそ半分です。この数字だけを見れば、不安になるのは当然だと思います。
03ただし、その割合は研究のやり方で動きます
同じレビューが、もう一段踏み込んでいます。
エビデンス:中 硬さの低下が報告される割合は、ヒトの唾液ではなく人工唾液を使った研究や、フッ化物処置を行わなかった研究で高くなりました。そして後処置を経たあとでは、29%まで下がりました(Attin 2009)。
著者の結論は、口の中の条件にできるだけ近づけた研究ほど、エナメル質の硬さが下がるリスクは小さくなったというものです。
口の中には唾液があります。カルシウムとリン酸が供給され、表面が戻る仕組みがあります。試験管の中には、それがありません。
04起きうることは、ちゃんとお伝えします
エビデンス:中 レビューは、攻撃的な漂白ではエナメル質の軟化・表面の粗さ・脱灰しやすさの増大が起こると述べています。漂白剤のpHが酸性に傾くと、水素イオンがエナメル質の結晶を攻撃してカルシウムとリン酸が遊離するとも書かれています(Carey 2014)。
一方で同じレビューは、表面が軟化したものの侵蝕は認められなかったという研究も紹介しています。
そして結論は、「メーカーの指示に従って使用する場合、過酸化水素・過酸化尿素によるホワイトニングは安全かつ有効である」。同時にエナメル質の侵蝕、ミネラルの劣化、脱灰しやすさの増大、歯髄の傷害というリスクも、同じレビューが明記しています。
※当院も「安全です」とは申しません。研究がそう言い切っていないためです。書けるのは、条件によって結果が変わることと、指示された範囲で使うことを前提に評価されていることまでです。
05「攻撃的な漂白」を避けるという設計
リスクが上がるのは攻撃的な使い方のときだ、という点は一貫しています。濃度・時間・回数の話です。
当院がオフィスで使っているホワイトニング材は、混ぜたあとの過酸化水素がおよそ23%です。研究が「これ以上濃くしても白さは増えない」とする25〜35%の、下端付近にあたります。ホームの材料も、濃度と装着時間の組み合わせが違うものを複数そろえています。
濃く・速く・長く、を避ける。白さは酸化で決まるので、必要以上に強くする理由がありません。
なお、当院では製品のプロトコルに従っており、事前のフッ化物処置は行っていません。先ほどの研究でフッ化物が出てきたのは、実験条件の違いを説明する文脈です。Carey 2014 が「安全かつ有効」と結論づけているのも、メーカーの指示に従って使用する場合のことでした。工程を足すより、決められた使い方を守るほうを取っています。
06そもそも薬を使えない歯があります
材料には、メーカーが定めた使用条件があります。当院で使っているものでは、次の歯には使わないことになっています。
- すでに知覚過敏がある歯
- むし歯のある歯
- 象牙質が露出している歯
- 歯根が露出している歯
- 合っていない詰め物・被せ物のある歯
- くさび状欠損・咬耗・ひびのある歯(ホームの場合)
無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳期の方も受けられません。オフィスでは気管支炎・喘息・光線過敏症の方も対象外です。
表面がすでに弱っている歯には、そもそも使わない。条件を整えるというのは、こうした一つひとつを診てから決めることです。
- 溶かして白くしているのではありません。抜去歯の実験では、ミネラルを溶かすと明度は−8.5で暗くなりました
- 硬さの低下は漂白の直後で処置の51%に報告されています。ゼロではありません
- ただしその割合は人工唾液を使った研究やフッ化物なしの研究で高くなり、後処置を経ると29%に下がりました
- 当院も「安全です」とは申しません。研究がそう言い切っていないためです
- リスクが上がるのは攻撃的な使い方のとき。濃く・速く・長くを避け、すでに弱っている歯には使いません
- Attin T, Schmidlin PR, Wegehaupt F, Wiegand A. Influence of study design on the impact of bleaching agents on dental enamel microhardness: a review. Dent Mater. 2009;25(2):143-157.(実験条件が結論をどう変えるかを検討したレビュー)PMID 18635255
- Carey CM. Tooth Whitening: What We Now Know. J Evid Based Dent Pract. 2014;14(Suppl):70-76.(レビュー)
- Eimar H, Siciliano R, Abdallah MN, Nader SA, Amin WM, Martinez PP, Celemin A, Cerruti M, Tamimi F. Hydrogen peroxide whitens teeth by oxidizing the organic structure. J Dent. 2012;40 Suppl 2:e25-33.(抜去歯60本を6群に分けた実験・各群10本)PMID 22925924
