読む相談室 > 第3不安を解く 骨が足りないと、インプラントは無理?
CHAPTER 3不安を解く

骨が足りないと、インプラントは無理?

この記事で分かること
  1. 方法は「骨を造る」と「骨を造らない」の二つ。どちらが良いかは残っている骨の高さで変わります。
  2. 研究では骨補填材の有無でインプラントの生存に統計的な差はありませんでした
  3. ただし骨が非常に少ない場合は、造る方が適することがあります。造らない方法が常に良いわけではありません。

「骨が足りないので、インプラントはできません」。そう言われて、あきらめた方もおられると思います。

この記事では、骨が足りないときに何ができるのかを整理します。結論を先に言うと、方法は「骨を造る」と「骨を造らない」の二つがあり、どちらが良いかは残っている骨の状態で変わります。どちらかが常に優れているわけではありません。

01なぜ骨が足りなくなるのか

歯を抜くと、その歯を支えていた骨は自然にやせていきます。研究をまとめた解析では、抜歯後6か月で骨の幅の約29〜63%(平均およそ3.8mm)が失われ、その多くは最初の3〜6か月に集中すると報告されています(Tan 2012)。

さらに上あごの奥歯には上顎洞という空洞があり、歯を失うと下に広がってくることがあります。骨の高さが足りなくなるのは、この二つが重なるためです。

02方法A:骨を造る(骨造成)

足りない部分に骨補填材などを足して、骨の量を増やしてから、あるいは増やすと同時にインプラントを埋めます。上あごの奥歯では、上顎洞の底の粘膜を持ち上げて骨を足す上顎洞底挙上(サイナスリフト)が代表的です。

骨が大きく失われている場合や、より多くの骨量が必要な場合には、この方法が適します。一方で、治療期間は長くなる傾向があり、術後の負担もやや大きくなります

03方法B:骨を造らない

残っている骨を活かし、術式やインプラントの設計で対応する方法です。大きく3つあります。

骨補填材を用いない上顎洞底挙上(グラフトレス)

上顎洞の底の粘膜を持ち上げてインプラントを埋め、骨補填材を足さずに、血のかたまり(血餅)による自然な骨の形成にゆだねる方法です。

骨を削らず押し広げて埋める(オッセオデンシフィケーション)

通常のドリルは骨を削り取りますが、骨を押し広げながら密度を高めて埋入部をつくる器具を使う方法です。やわらかい骨でも埋入時の初期の固定が得やすくなるとされています。

※この方法の裏づけは、いまのところ「初期の固定が得やすい」という範囲までです。「これを使えば骨を足さずに長持ちする」と言えるだけの研究はまだありません。当院もそのようには説明しません。

長さを抑え、太さで支える(ショートインプラント)

エビデンス:中 長さの短いインプラントと、通常の長さ+骨造成を比べた研究では、生存に有意な差はみられなかったと報告されています(Lin 2021ほか、10年の無作為化比較試験による補強あり)。骨の高さが足りない部位で、大がかりな骨造成を避けられる場合があります。

04研究では、生存に差がありませんでした

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい点です。

インプラントが残っていた割合0%50%100%95%補填あり98%補填なし統計的な差なし(n.s.)増えたのは「洞内にできる骨の量」の方でした
出典:Chen 2024(Arch Med Sci・無作為化比較試験のメタ分析)。補填あり/なしで生存に統計的な有意差はありませんでした。当院の成績ではなく、公表された研究の要約です。個々の結果を保証するものではありません。

エビデンス:強 無作為化比較試験をまとめた解析では、骨補填材を用いた場合と用いない場合とで、インプラントが残っていた割合に統計的な差はありませんでした(Chen 2024)。一方で、洞内にできる骨の量は補填材を用いた方が多くなりました

つまり骨補填材は「骨の量」を増やしますが、それがそのまま「インプラントが残るかどうか」を決めているわけではないということです。10年間追いかけた研究でも、補填材を用いない方法は対照と同等の経過だったと報告されています(Rammelsberg 2020)。

「差がなかった」の正しい読み方「統計的な差がなかった」は「まったく同じ」の証明ではありません。差が検出されなかった、という意味です。研究の規模や期間によっては、小さな差を見つけられないこともあります。 骨補填材を用いない方法の10年以上の直接データも、まだ限られています

05術後の負担は、骨を造らない方が軽い傾向

術後に続いた日数(少ないほど負担が軽い)0243.21.3痛み2.10.7食事の不自由10睡眠への影響補填あり補填なし
出典:Starch-Jensen & Bruun 2021(Int J Implant Dent・無作為化比較試験 n=40)。 差は1〜2日ほどで、どちらの方法も負担そのものは大きくありません。 当院の成績ではなく、公表された研究の要約です。個々の結果を保証するものではありません。

エビデンス:中 無作為化比較試験では、痛み・食事の不自由・睡眠への影響が続いた日数は、骨補填材を用いない方が短かったと報告されています(Starch-Jensen & Bruun 2021・n=40)。

ただし差は1〜2日ほどで、どちらの方法も負担そのものが大きいわけではありません。負担の大きさに最も効くのは、実は自分の骨をどこから採ってくるかです。腰の骨など口の外から採る場合は負担が大きく、口の中から採る場合は小さいと報告されています(McKenna 2022)。

06では、何で決まるのか — 残っている骨の高さ

エビデンス:強 適応を決めるうえで最も重要なのは残っている骨の高さです。10年間の研究では、残っている骨が高いほど経過が良く、骨が非常に少ない場合(およそ1〜3mm)ではリスクが上がることが示されています(Rammelsberg 2020、Guo 2020)。上顎洞の粘膜が破れる割合も、骨が少ないほど高くなりました。

骨が少ないほど、造る方が適する
つまり「骨を造らない方法が常に良い」わけではありません。骨が非常に少ない場合には、骨を造る方法の方が適していることがあります。だからCTで残っている骨の高さを確かめたうえで判断します。
Rammelsberg 2020(J Clin Periodontol・10年コホート)/Guo 2020(Sci Rep・メタ分析)。公表研究の要約であり、当院の成績ではありません。

07リスクについて

上顎洞底挙上では、上顎洞の粘膜に小さな穴があく(穿孔)ことがあります。報告されている頻度には幅があり、側方から行う方法ではおよそ20〜31%とされています。

エビデンス:強 術中に適切に処置・修復された場合、その後の経過に大きな影響はなかったと報告されています(Diaz-Olivares 2021)。ただし穴が大きい場合には治癒を待って治療を延期することがあります。このほか、腫れ・痛み・出血・感染、インプラントが骨と結合しない可能性などがあります。

08費用で方針が変わらないようにしています

「骨を造らない方法を勧められるのは、その方が儲かるからでは」と思われるかもしれません。当院では、そう疑われないように料金を設計しています。

骨を造る方法(基本35万円+骨造成10万円)でも、骨を造らない低侵襲の方法でも、総額は45万円で同じです(いずれも税込・CT精密診断から被せ物まで含む)。費用を理由にどちらかへ誘導することがないようにするためです。選ぶ基準は、お口の状態とご希望だけになります。

この記事のまとめ
  • 方法は2つ:骨を造る/骨を造らない。どちらが良いかは残っている骨の高さで変わります。
  • 研究では、補填材の有無で生存に差がありませんでした(Chen 2024)。増えたのは「骨の量」の方です。
  • 骨が非常に少ない場合は、造る方が適することがあります。造らない方法が常に良いわけではありません。
  • 当院はどちらでも総額45万円。費用で方針が変わらないようにしています。

他院で「できない」と言われた場合でも、残っている骨の高さや位置によっては、方法がある場合があります。逆に、全身の状態やお口の条件によっては、当院でも適応とならないことがあります。その場合も理由と、入れ歯・ブリッジを含めた代わりの選択肢をお伝えします。

まずはCTで、いまの骨がどれだけ残っているかを確かめるところからです。他院で提案された治療計画についてのご相談(セカンドオピニオン)も承ります。

参考文献
  1. Chen Z, et al. Clinical evaluation of maxillary sinus floor augmentation with and without grafting materials: a meta-analysis of randomized controlled trials. Arch Med Sci. 2024. PMID 38757030
  2. Rammelsberg P, et al. Long-term survival of implants placed with transcrestal sinus floor elevation without grafting. J Clin Periodontol. 2020;47(4):505-514.(10年コホート)PMID 32145083
  3. Guo Y, et al. Transcrestal sinus floor elevation with or without bone grafting: a meta-analysis. Sci Rep. 2020;10:5935. PMID 32245996
  4. Starch-Jensen T, Bruun NH. Patient-reported outcome measures after maxillary sinus floor augmentation with and without grafting material. Int J Implant Dent. 2021.(無作為化比較試験 n=40)PMID 33748923
  5. Lin Y, et al. Short implants versus longer implants with maxillary sinus floor augmentation: a systematic review. Int J Implant Dent. 2021. PMID 34013452
  6. Diaz-Olivares LA, et al. Management of Schneiderian membrane perforations during maxillary sinus floor augmentation: a systematic review and meta-analysis. Int J Implant Dent. 2021;7:91. PMID 34250560
  7. McKenna G, et al. Patient-reported outcomes following autogenous bone grafting: a systematic review and meta-analysis. J Evid Based Dent Pract. 2022;22(3):101731.(23研究のSR/MA)PMID 36162883
  8. Tan WL, et al. A systematic review of post-extractional alveolar hard and soft tissue dimensional changes in humans. Clin Oral Implants Res. 2012;23 Suppl 5:1-21. PMID 22211303
※本記事で紹介した研究知見は一般的なものであり、個々の患者さんの結果を保証するものではありません。実際の状態や治療方針は、診察・検査のうえで判断します。

読んでも迷うときは、
ご相談ください。

相談とCT診断は無料です(約30分)。当日のご契約は求めません。
「自分の場合はどうなのか」を、CT画像を見ながら一緒に確かめましょう。

お電話でも承ります050-1721-8291(診療時間内)

※インプラント治療は自由診療(保険適用外)です。費用・リスク・副作用はインプラントのご案内に記載しています。

LINEで相談相談を予約